シミ取り治療はレーザーだけではありません…選ぶポイントとは

シミに様々な種類があることは、こちらの記事で解説しましたので、この記事をお読みになる前に目を通してみて下さいね↓
それぞれのシミに対して治療法があります。
置いてある機械にもよるので一概には言えませんが、肝斑(かんぱん)の場合は強くレーザーを当てると悪化してしまうので、ファーストチョイスとしていない施設が一般的です。
擦らない、紫外線を避ける、というスキンケアに気を付けていただきながら、トラネキサム酸(トランシーノ®、リカバリン®、トランサミン®など)やビタミンCの飲み薬、ハイドロキノンクリームで治療していきます。
他にはイオン導入などでトラネキサム酸を肌に入れていく方法もあります。
ニキビなどの炎症後色素沈着は時の経過とともに自然と薄くなっていきますが、気を付けるスキンケアや治療内容は肝斑と概ね同じです。
後天性真皮メラノサイトーシスは医学的にシミではなくアザなので、レーザー治療しか効果がありません。
ここでは、老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)・そばかす(雀卵斑:じゃくらんはん)について、複数の治療法があるためご紹介していきます。
(もちろん肝斑を合併する場合は、上記の治療を並行して行っていきます。)
なお、回数や治療期間は薬剤・機械によって異なりますので、あくまでも目安です。治療の大まかなイメージを掴んでいただければと思います。
①トレチノイン・ハイドロキノン療法
2種類の塗り薬を使って治療していく方法です。
ビタミンAの仲間であるトレチノインと、漂白作用のあるハイドロキノンを組み合わせていきます。
トレチノインには皮膚のターンオーバーを促す働き、真皮のコラーゲンを増やす働き、皮脂の分泌を抑える働きがありますので、シミ以外にも小じわやニキビの治療としても用いられます。
(そのため、表情ジワやほうれい線の治療目的ではありません。)
4か月程度かけて少しずつシミを薄くしていきます。
私も、メイクの上からシミが分かるようになったので、この方法で治療しました。
トレチノインは効果が高い反面、皮をむいてメラニンを追い出す働きが強いので、治療中に皮膚が赤くなって皮がむけてヒリヒリする時期があります。
治療箇所にテープを貼る必要はなく、赤みや皮むけの上からメイクをすることは可能ですが、やはり目立ちます。
私のすっぴんです。目尻のあたりが皮むけしていますよね。写真では分かりづらいかもしれませんが、頬の方も少し皮がむけています。
体がだんだん慣れてくると赤みや皮むけは落ち着いてきますが、この時期を乗り越えられるかがポイントになります。
なお、トレチノインは妊娠・授乳中には使えません。
トレチノイン・ハイドロキノンを使った治療は、シミのポイント治療として使うこともありますし、顔全体に使うこともあります。
オバジゼオスキンヘルスという化粧品を使ったプログラムをご存じでしょうか?
ゼオスキンヘルスは、グリコール酸やハイドロキノンが入った化粧品と処方薬のトレチノインを顔全体に塗って治していきます。
シミだけでなくニキビやニキビ跡、毛穴の治療も同時にできるので、フルフェイスで様々なお悩みを治療したい方に向いています。
塗る治療の中で最も効果が高い反面、赤みや皮むけは強く起こりますが、現在のマスク生活の中「おこもり美容」として需要が高まっています。
(これは私がニキビで使った薬ですが、成分が似ているため同じような反応が起こります。)
②ケミカルピーリング
皮膚全体に薬を塗って、皮膚の角質層を一時的に溶かします。
角質層とは、ここのことです。
これによって皮膚のターンオーバーを促し、シミを追い出していきます。
2-4週間ごとに6回程度を1クールとして治療します。
真皮でのコラーゲンを増やす働きも認められているので、小じわの改善も認めます。
また、毛穴の詰まりを取るのでニキビの治療としても用いられ、治療を繰り返すことに毛穴が目立たなくなります。
薬の種類は複数あり、施設によって異なります。
治療後12時間のメイクを禁止する場合が多いですが、赤みや皮むけやカサブタができないので、日常生活に取り入れやすいです。
「夏みかんから桃の肌へ近づけていく治療」という例えもある通り、主に脂性肌(脂っぽい肌)の方に向いており、肌質の改善も目指していく治療法です。
なお、多くの医療機関で導入されているサリチル酸ピーリングですが、アスピリンアレルギーの方は施行できません。(アスピリン=アセチルサリチル酸)
③光治療(IPL、フォトフェイシャル®などが相当します)
シミのメラニンや血管のヘモグロビンに作用する様々な波長の光を当てることで、トータルで肌の悩みにアプローチする治療法です。
シミだけでなく赤ら顔や毛穴、小じわ、肌のハリといった部分に対応していきます。
月1回を目安に光を当てていき、6-10回程度繰り返しますので、半年から1年弱というのが目安です。
その後は3-6か月に1回メンテナンスとして受けていただくことをお勧めしています。
この治療によって若返り遺伝子が働くという研究結果もあるので、定期的に治療することでエイジングケアも兼ねることができます。
シミと光が反応することで直後は少し濃くなり、その後2-3日して薄いカサブタ(ゴマのような砂粒のような黒いざらつき)が浮いてきます。
治療箇所にテープは不要でカサブタの上からメイクができますが、洗顔やメイクの時に擦らないように気を付けていただきます。
10日前後で自然にカサブタが取れるとシミが少し薄くなっており、これを繰り返していきます。
(シミ部分にのみピンポイントで光を繰り返し当てる治療もありますが、治療機器によって異なります。)
④レーザー治療
レーザーの強い光を当ててシミのメラニンを壊していきます。
レーザーを当てた場所は、テープを貼る、ワセリンガーゼを貼るなど1-2週間処置が必要です。
一例ですが、こんなテープです。
シミ治療部位はこの時期メイクをすることができませんし、テープを貼っているところはどうしても他の人からわかってしまいます。
しかし、シミ治療の切れ味は最も鋭いです。
私の腕にあったシミ治療の経過をご紹介しますね。
シミ治療レーザーの出力確認のため、自分の腕のシミに1shot打ちました。
テストショットだったため、少し強く打って内出血の赤みが目立っています。(緑の矢印)
急なことだったため、もとのシミの写真がなくて大変申し訳ありませんが、ピンクの矢印と同じようなシミがありました。
2週間程度でシミの部分が薄い膜となって浮き上がって剥がれ落ち、下からピンクの皮膚が上がってきます。
手の甲の場合は4週間くらいかかることもありますが、心配要りません。
膜が取れた時点で処置は終了し、顔ですとメイクが可能になりますが、治療後1か月くらいすると一旦色戻りしてきます(炎症後色素沈着)。
私の場合はテープを剥がした直後に赤みがあり、治療後1か月経って少しずつ色が抜けてきました。
擦らない、紫外線を避けることで3-6か月かけて少しずつもとの肌色に戻っていきますが、シミがぶり返したように感じる方も多く、色戻りの程度も個人差があるのであらかじめご説明しています。
私の治療2か月後の経過です。どこにあったか分からなくなっていますね。
色素沈着や赤みの持続期間は、もともとの体質にもよります。
過去に引っかき傷やニキビや虫刺されやヤケドの跡がどのくらい残っていたかによって、おおよその目安がつきます。
一度でシミが取り切れない場合もありますので、色素沈着が落ち着いた頃に再治療を検討します。
レーザー治療は、シミの部分だけを少ない回数で治療したいという方に向いていますが、肝斑を合併している方は先に肝斑の治療が必要です。
なお、レーザートーニングという治療がありますが、これはレーザーを顔全体に弱く当てていきながら少しずつシミを薄くし、毛穴や小じわも一緒に治療していく方法なので、治療内容や経過は③に似ています。
※レーザーと光治療の違いですが、レーザーは単一の波長の光で、光治療は複数の波長の光です。
単一の波長は切れ味が鋭いですが、「茶色(シミ)には効くけれど赤(血管)には効かない」など、単一波長ならではの得手不得手があります。
一方光治療はマイルドな光ですが、「茶色にも赤にも効く」ように幅広い波長で構成されていますので、1回で劇的な変化がない代わりに様々なお悩みに対応できるようになっています。
★治療の特徴と選ぶポイント
それぞれで治療に特徴がありますので、患者様のご希望を聞きながら決めていきます。
低予算(数千円~)のポイント塗りで少しずつゆっくり始めたい、という方は①のトレチノイン・ハイドロキノンを選ばれることが多いです。
(ゼオスキンヘルスはセットで買っていただくので、数千円というのは難しいです。)
一方で、赤みや皮むけが辛い方、近々妊娠も考えているという女性には向きません。
②のケミカルピーリングはカサブタを作らない治療のため、メイクをした時のざらつきが一時的でもダメという方にお勧めしています。
顔全体を治療していくものなので、保険診療で治りにくいニキビがある方、毛穴や小じわも一緒に治療したい方にも有効です。
ピーリングの薬にはいろいろあるため、それぞれの施設で使い分けています。
ただし、ケミカルピーリングは一時的に皮膚を薄くする治療なので、乾燥肌が強い方やアトピー性皮膚炎持ちの場合には続けにくい面もあります。
シミのメラニンに直接作用するわけではない(色に特化した治療ではない)ので、シミ治療としての切れ味はマイルドです。
③の光治療はシミを焦がして浮かせて削り取っていくイメージの治療ですが、光の性質上完全にシミを取り除くことは難しく、根っこが取り残ってしまうことが多いです。
治療のゴールとしては、「すっぴんの時に本人はシミがわかるけれども、コンシーラーなしでメイクできる」という仕上がりが目安です。
多くの女性はテープを貼らずに(周りの人に知られずに)少しずつシミを薄くしたい、またメイクした時にシミが目立たず厚化粧しなくて済むという部分を大事にします。
(すっぴんの時よりもメイクした時の姿を重視し、治療の結果のみならず「キレイになっていく過程」も重要だということです。)
顔全体に光を当てることでシミ以外のお悩みも一緒に治療していきますので、実はこのタイプの治療が一番ニーズがあります。
そばかすや老人性色素斑が大小たくさんある場合、④のレーザー治療をするとテープだらけになってしまうため、光で少しずつ取っていきたい方が多いです。
同じ理由で、レーザートーニングを選ばれる方も多いですね。
(…とかつては書いていたのですが、コロナでマスク生活になってからは、テープを貼る治療の需要も高まってきました。【2021年4月追記】)
④のレーザーは1個だけ独立して目立つシミがある場合、人からテープがわかってもいいから早く結果を出したい場合(色素沈着は出ますが)にご希望が多く、男性の方が多いです。
もちろん、女性でも髪の毛で隠れる部分のシミに関してはレーザー希望も多いです。
シミ「だけ」を効率よく治療したいという方向きですね。
よくあるご希望ごとにまとめますと、
■低予算で少しずつシミの部分を治療したい→トレチノイン・ハイドロキノン(塗り薬)
■メイクをした時にカサブタが嫌、ニキビもある、顔全体の治療希望、光アレルギーあり→ケミカルピーリング
■シミだけでなく赤みも一緒に治療したい、テープを貼るのは嫌、乾燥肌、シミ・そばかすの数が多い→光治療
■シミの部分だけを少ない回数で治療したい、半年から1年の治療期間は長過ぎる、テープOK→レーザー
というような選び方になると思います。
もちろんこれらは目安であって、正解はありません。
医師の診断が大前提であり、クリニックによって導入しているものも異なりますので、ここに書いたものと違う治療になることも当然あります。
しかし、「治療希望はシミだけor顔全体なのか」「半年から1年程度かけて繰り返し治療でも構わないか」「他人に治療を知られてもいいか」などを考えてから受診されると、担当医の説明も理解しやすく決めやすいです。
あなたに合った方法はどれでしょう?参考になさって下さいね。
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札幌市中央区の円山公園皮膚科形成外科で皮膚科専門医・美容皮膚科医として勤務しております。
私自身が体質的な敏感肌に悩み、普段のスキンケアを見直すことで肌のトラブルを減らせると痛感しています。
忙しい外来では伝えきれないたくさんのことを、ブログを通じてお届けしたいと思っています。
スキンケアのよくある間違いについて医学的な視点でお伝えしているほか、敷居が高いと思われがちな美容皮膚科治療についても皮膚科専門医として発信していきます。
乾燥肌・敏感肌・くすみで悩んでいる方へ、自宅でできる対処法を14日間で知っていただける無料メールレッスンもありますので、日々のスキンケアにぜひ取り入れていただければと思います。
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